【共育】コラム

『この仕事に向いてないと思う』と言われたら?感じたら?

雪山の山頂を登る人

そろそろ春を予感させる季節です。皆様は何で春の訪れを感じますか?
さくらの開花?新人の入社?プロ野球開幕?ヒートテックを着なくなる?ムズムズ鼻?目のかゆみ?笑。春を感じるきっかけとなるものは、人それぞれですね。

私はあるセリフを聞くと、あぁ春だなぁと感じます。きっと皆様も聞いたことがあるセリフだと思います。
耳をすましてみて下さい。ほらっ!聞こえてきた…
(・・・・)
(この仕事に・・・・)
(この仕事に向いて・・・)
『この仕事に向いてないと思うんですよ』
少し斜めな性格かもしれませんが(笑)このセリフを聞くといつも私は春を実感するのです。

「自分はこの仕事に向いてないと思うんです」

初めは、人や環境、接客や業務に慣れるのに必死です。それを過ぎたら次は、仕事を覚えるのに必死。そして1年が経つ頃、ある程度慣れて心にも余裕が持ててきた時に少し冷静になって周りを見る…そんな時に出てくるセリフが『私、この仕事に向いてないと思うんですよ』これは、誰もが経験する病気だと私は思ってます。子供がかかる、おたふく風邪やハシカみないなものです。

後輩や新人からこのセリフを言われた時、皆様だったらどんな返答をしますか?
私の場合は満面の笑みで『おめでとう♪』と伝えます。ほぼ全員、驚いた顔をします。ですがいわゆる、大人になるためのある種のイニシエーション(儀式)ではないでしょうか?恥ずかしながら、私自身も「向いてない」も吐いた事があるのです。

「自分は向いていない」と、どうやって決めているのか?

「では、どんな仕事なら向いていると思う?」そう聞き返しても、明確な答えは返ってこないのが大半です。そうですよね。人生で就いた職なんか限られているし、世の中の仕事を全部知ってる訳ではないのです。

もっと言えば「どの口が言っているんだ?」という話になってしまいます。つまり『この仕事に向いてないと思う』と言える人種は、たった1つだけ【その道を極めた人】だと思います。それ以外は、このセリフを吐いてはいけない、吐くことができないのです。毎日毎日120%で仕事をしている訳ではないのに、世界中の誰よりも努力している訳ではないのに、四六時中・年中無休で考えている訳ではないのに、仕事に向いているかどうかが分かるはずがないですよね。

例えば、メジャーリーグで活躍しているイチローが、『結果は出しましたけど、僕は野球には向いていませんでした』とか。例えば、50歳を迎え今も現役で活躍しているJリーガーのカズが、『この年齢まで努力し続けましたけど、僕はサッカーには向いていませんでした』と言うのなら、これには納得します。

それ以外は全て『言い訳』や『甘え』ではないでしょうか?「向いてない」と言う後輩たちには、人生の先輩として、職場の先輩として、教える義務があるとも思っています。

悪い意味での「慣れ」と「余裕」が「向いていない」を生む

ガムシャラに挑んでいた1年目と違い、少し余裕が出てきた2年目。その余裕がどちらに転ぶのか、あるお店の例を考えてみましょう。

販売店に入社2年目の18歳、A子さん。ノリと勢いと物怖じしない性格で、研修明けから販売契約件数を伸ばし続けてきました。接客を指名するお客様も増えて順風満帆に思われていましたが、ここ数ヶ月は契約が伸びずに悩んでおり、ついに同期B子さんに契約件数も抜かれてしまいました。

一方、同期B子さんは、比較的飲み込みが遅く、なかなか販売までこぎ着けることが出来ず長い間苦しんできましたが、努力して少しずつ成長してきたタイプの方でした。

A子さんの接客を見る機会があったとき、私は『あぁ、これでは契約は無理だろうなぁ』と率直に感じました。

トーク内容の技術も全く問題がありません。笑顔だってあります。ですが、お客様に伝えようとする情熱が劇的に低下していました。初めの頃は、商品やサービスの訴求をしていたのに、いつからか「ただの説明」になってしまっていたのです。本人はまったく気付いていませんでした。

一生懸命さや必死さが抜けると、別のものが伝わってしまう

新人の頃は契約の事なんて考えず、ただただ一生懸命お客様に伝えようと必死だったはずです。初めてお客様に伝わって契約になった時など、心から喜んだことでしょう。これが、契約を取るのが「普通」「当たり前」になった時、感動や喜びは半減します。

契約が普通になったということは、仕事の感覚基準が上がったということ。もちろん喜ばしい限りですが、感覚基準が上がっても、伝えようとする情熱が下がってはいけないのです。

販売店ですから「売ること」「契約すること」が最優先なのは当然です。しかし慣れてくると、契約になるまでの【過程】をすっ飛ばしてしまうのですね。お客様への丁寧で真摯な対応をベースに、情熱を持ってお客様に伝える。この部分を差し置いて契約してもらおうとするから「取れない」「つまらない」「向いていない」と流れていくのだと思います。

販売実績とお客様対応のバランスのとれた見方

お店で働いている以上、どうしても数字で評価されます。毎日、毎日目標と進捗のにらめっこ。順調に進捗している時は良いのですが、波があるのが数字です。感情の生き物「人間」の集団で数字を追いかけるわけですから、数字に波が出来るのは当たり前といえば当たり前ではありませんか?

販売スタッフの気分やモチベーション、そしてお客様の気分によっても、状況が様々に変化していきます。

「数字が出ない」にどう対処すれば良いか

では、数字が伸び悩んでいる時にはどんな対処をしていますか?
トークやツールの確認のみならず、自分自身の、そして販売スタッフのモチベーションの確認などもあるかもしれません。間違っているわけではありませんが、気合いと根性で乗り切るのは現実的ではありません。

そういう時には、一歩引いた所からお店全体を見てみることをお勧めします。
客観的にお店全体を見てみると、今まで当たり前にやれていた事が出来ていないことに気づけるはずです。例えばそれはちょっとした言葉や所作の節々が雑になっている、といった細かいことに表れます。

つまり、数字を追いかけ、販売目標を達成させたいのに、数字に目がいきすぎてしまい、一番大事で大切な『お客様対応』が疎かになっていたり、雑になっているということです。お客様があってこその数字なのだ、ということを忘れている。これもいわゆる一つの「慣れ」なのかもしれません。

どんなにベテランでも陥る「慣れ」のワナ

私自身はもう20年以上、営業や販売に携わっていますが、まだまだ道半ばの半熟者だと思っています。一生かけても「この仕事に向いていないと思う」なんて言えるかどうか分かりません。だからでしょうか、毎年このセリフを聞くと、自分自身も初心に帰ることが出来ます。

長年、営業や接客をしていると経験則から物事を判断出来るようになってきます。お客様との間合い、雰囲気、表情、声のトーン…経験則から判断し、タイミングを測って声をかけたり、クロージングできるわけです。経験則というのはもちろん経験からなるものなので、それぞれ人の感覚の部分になってきますが、それでも経験が豊富であればあるほど、正確になってくるものです。

ただこの経験則が思い込みを引き起こしてしまう場合もあるのです。それはどんなにベテランであっても同じです。

新入社員に教えられた驚きの「一瞬で相手の心を開く手法」

ある時、入社したばかりの新卒のスタッフがお客様に提案をしていました。当然、提案の仕方や話し方、表現の仕方はまだまだ素人同然ですから、見ている側としては少しハラハラするわけですね。「いやっそこは違う」「そこでツールを使う」「その話の順番ではダメだ」「お客様に伝わってない」など、私も多少のもどかしさを感じながら聞いていました。

私の経験則では、そのお客様の心の扉は慎重に少しずつ開けていくのが一番だと思って見ていました。ところがその新人はまるで自分の部屋のドアを開けるかように気軽にお客様の心の扉に手をかけて「スッ」と開けてしまったのです。経験がない、というのは武器になるのですね、その微妙なさじ加減や怖さを知らず、お客様へ伝えたい一心で、一生懸命に接した結果、あっという間、一瞬でお客様の心の扉を開けてしまいました。

話はトントン拍子に進み、もちろん契約です。

自分の経験則を信用するのは大事です。その上でさらに、経験がない新人を観察してみると、驚きの手法だったり、提案の原点だったり、意外にハッとさせられる場面が見られるかもしれません。自分の経験以外からも色々と取り入れていくのも、幅を広げる一つだと改めて感じました。

『悔しさ』は成長する為の最高のスパイス

正直、驚きで固まっていた自分がいました。少し悔しかった、というのもあるかもしれません。

ですが『悔しさ』は自身の成長の大きな糧になると思っています。『悔しさ』を感じなくなった時点で成長曲線は緩やかになるか、止まってしまうのです。ベテランは特にこの悔しさから逃げる傾向があると私は思います。

誰もが最初から何でも出来た訳ではありません。何度も失敗して何度も挫折して『悔しさ』を感じながら出来るようになってきました。でもベテランは「できない自分」を許すことができません。重ねてきた経験、プライドが意地のように凝り固まって、できない時の悔しさを追いやってしまうのですね。

どんなにベテランであっても「道を極めるまで」にはまだ上がある。ということはいつだって「できない自分」が存在するわけです。できないことに対して『悔しい』と言う気持ちを持ち続けてチャレンジしていくことが大切ではないでしょうか。

誰もが「自分はまだまだ」なのだから

仕事で関わる全ての人に「自分にはこの仕事は向いていない」なんて言わせたくありません。もちろん私自身も同じです。その為にも、常に背中は見せていきたい。

誰にでも襲いかかる「慣れ」を振り払い、いつでも新人のような気持ちで「できない自分」と向き合い、常に学ぶ姿勢を忘れない。そして、販売店ならではの「数字の魔力」に負けることなく、いつも目の前のお客様に真摯に向き合い続けることができたらその時は「道を極めた」と言えるのかもしれません。

いや、自分もまだまだです。

 

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