1on1…何をすればいいかわからない!「会話が成り立つ」とはどんな状態かを学べる、親子の会話事例

職場のあちらこちらでコミュニケーションエラーが起きています。上司と部下・同僚同士…など関係性が近くなるほど「一体何を考えているのか全然わからない相手」だらけだ、と感じてしまいますね。

自分に近い存在こそ謝罪や感謝の言葉を述べるのすら恥ずかしいものですが、人として当たり前のことができないのに「相手が何を考えているのか」を知ろうとするのはお門違いかもしれません。

対話を通してお互いが理解をしあうのがコミュニケーション。
「最も関係性が近い」と言えるのは親子です。ある親子の会話からコミュニケーションの「基本」を学んでいきましょう。

父親を見習わねば…この会話の、一体何が「すごい」のか?

これは以前に私が電車に乗った時、たまたま目の前にいた親子の会話です。

父親「今夜のご飯はカレーだってお母さんが言ってたよ」
子供「本当?やったー」
父親「やったね」
子供「お母さんのカレー大好き」
父親「美味しいよね」
子供「うん。美味しい」
父親「じゃあ、本屋さんに寄ったら直ぐに帰ろうね」
子供「うん。でも早く帰りたいから、本屋さんは今度にするよ」
父親「えっ?本屋さんに寄らないで帰るってこと?」
子供「うん。早くカレーが食べたいから今度でいい」
父親「そうか、じゃあ本屋さんは今度にしよう」
子供「今から帰ると何時になるかな?」
父親「何時になるかな?」
子供「次の駅まで5分くらいだよね」
父親「そうだね。5分くらいだね」
子供「駅から家までは10分くらい?」
父親「そうだね。10分くらいだね」
子供「じゃあ、今が17時だから・・・」
父親「5分+10分だね」
子供「15分だから、17時半前には着くね」
父親「正解!!」
子供「じゃあ、お母さんに連絡しなくちゃ」
父親「そうだね。準備もあるしね」
子供「僕がお母さんにLINE入れるね」
父親「お願い」
子供「楽しみだねカレー」
父親「楽しみだね」
子供「あっ着いた」
父親「着いたね」

ごくごく普通の5分くらいの会話でしたが、ちょっと感動していましました。
まず、この親子の会話が成立していること。大人同士でもここまで会話を続けるのは簡単ではありませんよね。
たとえば、言いたいことだけ言ったり・・・返事だけをして終わったり・・・会話がぶつ切れになって、 川の流れのようになっていないことが多いでのではないでしょうか?

子供さんは小学校4年生くらいに見えましたが、この子にコミュニケーション力があるということだけではないと思います。
なにより父親が凄い!
父親(30代前半)が子供の言葉をしっかりと受け止めて、 きちんと返してから更に引き出しているんですよね。

コミュニケーションはどうやって「見習えるか?」

コミュニケーションに関する書籍は数多くありますが、 ちょっと視点を変えれば、 色んな場所や場面が書籍の実写版になってきます。リアルな現場を見ることも、 コミュニケーション力向上に繋がるのではないでしょうか?

『コミュニケーションは書籍で起こっているんじゃない。 現場だっ!!』ということなのですね。
私は、この父親のような人がリーダーだったら、 コミュニケーションロスやコミュニケーション不足にはならないだろうな・・・と想いながら二人の会話を聞いていました。

コミュニケーションエラーは「伝えたいだけ」の時に起こりやすい

対話には、電車内の父親のように、子供(相手)の話を「受け止めてあげる」ことが欠かせません。相手が話してくれたことを「ちゃんと聞いているんだよ」という意思表示をする、ということですね。「聞いてくれている」とわかるから、話してくれる。そうやって対話は成り立っているのです。

ですが「自分が伝えたいことは『相手のため』を思ってなのに…」と感じるかもしれません。言葉は悪いかもしれませんが「あなたのためなのだから『まずは』聞いたら?」という気持ちです。

これがまた、コミュニケーションのエラーを引き起こす要因になるんです。

「あなたのため」という意図が相手に伝わらない…

「こうした方がいいのに」と素直に話すと、あんまりいい反応が返ってこない。という経験はありませんか?

たとえば、部下が一生懸命練りに練った企画や案、上司の自分が見るとどうしても足りないところだらけ…「ここ、もっとこうできるんじゃない?」とやんわりアドバイスしたつもりが、部下がむくれちゃった!
たとえば、お客様が購入を迷っておられる時に「お客様にはこちらがいいと思いますよ」と決断を後押ししたつもりが、なぜかその後、気まずい雰囲気に…
たとえば、家族が風邪をひいたら大変だろうと思って「もっと厚着しなきゃダメじゃん」と言うと、「そんなに責めなくてもいいのに」としょんぼり…

えーっ!?何、なに!?
「そんなつもりで」言ったんじゃないのに!!!

伝わらないことへのイライラや怒り、「なんでそんな風に捉えるの?」と相手を責めたくなる気持ちになるのはもちろん、あまりにもうまくいかないことが続くと「私ってやっぱりダメなのかな?」とか「人より伝え方が下手なのかな?」とかこちらの気持ちもだんだんしぼんでしまいがち。

コミュニケーションってやっぱり難しい…って投げ出したくなることもあるかもしれません。

特に身内や親しい人などには割とちょいちょい、やっちゃいませんか?
「自分の気持ちをわかってくれないの?」「あなたのために言ってるのに」と相手の気持ちを考えるのをおろそかにしてしまうこと。その都度、イライラしたり、凹んでみたり。感情にぐるぐると忙しく振り回されるのを止められない時もわりと多いような気がします。

対処法は、いつも「本当に大事なこと」に立ち返ること

そういう時はいつも「自分が本当に大切にしたいことは何か?」を考えるように心がけます。
その瞬間に沸き上がるさまざまな感情よりも、「わかってほしい」という気持ちなんかよりも、もっと大切なことがある、と気づくことがあるからです。

冒頭の例で言うのであれば、
・部下にもっと成長してほしい
・お客様にとって「良い判断」を選んでほしい
・家族を守ってあげたい
などのプラスな気持ちが隠れていたり。

「自分はコレを大切にしたいんだ」「それが伝わらなくて悲しいんだ」
と、自分で自分を認めてあげると、不思議と冷静になれて、「じゃあどうすればいいかな?」という思考が働きはじめます。そうして初めて、もう少し相手に寄り添った言葉を「選べ」たり、フォローに回ることができたりするのです。

コミュニケーションは決して難しくないと思うけれど奥が深くて終わりがありません。
相手の数だけふさわしいやり方が存在するし、たとえ同じ人であっても、いつも同じやり方が通用するとは限りません。相手との関係性によっても違ってくるわけです。人と関わる以上自分にも相手にも「感情」がありますから、ネガティブな感情に振り回されそうになることもコミュニケーションにはつきものかもしれません。

そんな時はぜひ、「本当に大切にしたいこと」を考えるよう頭をすぐに切り替えて、まずは自分を大切に認めてあげることからはじめましょう。つい、自分の事をそっちのけにしがちですが、実は「もっと大事にしてよ」と訴えているのは相手ではなく自分だという事もあるのです。

そうすればきっと、相手のことを大切にしている気持ちがもっとうまく伝わるのだろうと思います。

最後に

相手の気持ちを思いやることや、何を考えているのか?を汲み取ること、相手のしてほしいことを正しく見抜く、など…うまくできないものですよね。だからこそ質問を工夫し、言葉を選び、声をかけることを習慣にして、相手を知るために対話をする努力する必要があるのですね。

コミュニケーションを避けたまま、相手の考えを知るのは不可能です。こちらからアプローチせずとも相手が教えてくれる、わかってくれる、話してくれるなんていうのは妄想ですし、そもそも「話を聞いてくれていない」と感じる人に誰が自分の気持ちを話したいと思うでしょうか?

関係性が近すぎて「何考えてるのかわからない」と嘆く対象の相手。そういう人にこそ「『まずは』聞く・知る・受け止める・理解する」を習慣にすることが大切ですね。冒頭のお父さんのように…

職場のコミュニケーションを活性化させる方法

現場マネージャーと共に悩み、試行錯誤してきた6年間の人材育成におけるコミュニケーションノウハウを、実際の取り組み事例とともにご紹介。具体的な取り組み方や部下との関わりがうまくいかない理由、コミュニケーションを良くするための2つの前提など、「読めば明日、何をすれば良いかがわかる」37P資料を無料で公開中。