【人材育成】後輩の成長効率を高める、メンターとしての心構え

皆さんのチームでは「メンター制度」を取り入れていますか?
上司と部下の関係ではなく(もちろん上司が兼任する場合もある)、先輩が後輩のメンターとなり、教育や成長のケアやフォローをするための仕組みです。教育係とか育成担当などと呼ばれることもあるかもしれません。

目的は「メンティ(後輩)の成長を促すための育成」です。新たな知識やスキルの習得(ティーチング)だけにとどまらず、時に心の支えとなり、時に背中を押し、時に引っ張ってあげる役割も求められます。

でもいざ後輩を育成するとなった時「自分はメンターとしてどのように動き、働きかければ良いだろう?」と悩む人は多いです。
後輩を育成するにあたって必要とされる要素や考え方をまとめてみました。

後輩への接し方は「お客様対応」と同じ

後輩の進化を手助けできる先輩の動きとはなんでしょうか。
実は、ここでも「お客様対応」が活きてきます。

お客様は、叶えたいビジョンや得たい効果のために商品を求めます。
そんなお客様に対して、我々がまずはじめにすることはなんでしょうか?

ヒアリングですね。

同じように後輩にヒアリングをし、どんな動きを目指していて、独自の動きでどんな効果が得られると考えているのかを知ることが第一です。

これを聞き出す前に自分の経験則による助言や効率的な動きを指示することは、後輩の努力を頭ごなしに否定することにあたります。
ということは、その場で後輩が言うことを聞いたとしても、理解はされても納得はされていないでしょう。

お客様に商材の説明や訴求をしたときに、内容は理解してもらっても実際に購入してくれるとは限りませんよね。これと同じなのです。

後輩へのヒアリングの効能

また、ヒアリングをすることで後輩の向上心や成果をあげることに対してどう考えているかを確認することもできます。

お客様であれ社内の人間であれ、行動の原点には必ず納得があります。
例えばこの記事を読んで(わかっちゃいるんだけどねぇ、、)と思う方がいらっしゃるなら、それはまさに私自身が皆さんに理解はされても納得してもらっていないということになるわけです。

皆さんも納得できなければこの方法を使おうと思えないのと同じく、後輩も納得できなければ表面上言われた通りにしていても中身はどんどん独自の方向に進んでいってしまいます。

後輩の納得のためにもまずはヒアリングをして、後輩の動きの背景には誰の模倣があることを想定し、なんのためにやっているのかを知り、その思想を尊重した助言をしていきましょう。

後輩の「学習効率」を高める教え方2選

皆さんは後輩に新たな知識やスキルを伝授する際、どんな流れで教えていますか?

私自身は今まで「見て覚えろ、見て盗めタイプ」「2度は言わんぞメモを取れタイプ」「クイズ形式タイプ」「定着するまで都度、順を追って教えるタイプ」など様々なタイプの人にものを教わってきました。

基本は教わった側が自分で復習するのが社会人として当然ですが、こちらが効率化して後輩の覚えが早くなればそれはそれで楽ですよね。

大学の実験心理学で学習効率についての講義を受けたのですが、その中から2つの学習法(後輩への教え方)をご紹介します。

学習効率を高める①:科学的指導法

無作為に選んだ複数の単語を覚えるという場面で、

Aグループ:その日のうちに復習をする
Bグループ:数日後に復習をする

そして被験者が忘れた頃にテストをするという内容の実験を行いました。
結果は明らかにBグループが優秀な成績でした。

これは正式な実験で、多角的に調べられており、有意差もキチンと出ています。
つまり、教える側ができることとして、数日後に復習を促し、もう数日経ったのちにテスト形式で確認を取ることで定着率が上がるということです。毎日同じことを繰り返す手間を省くこともでき、教わる側にも「定着してきている」と自信がつくため、とても有効な手段になるでしょう。

この方法には一定の期間が必要になります。
未経験者が入ってきた場合には、 研修期間があるはずなので、本番に向けてしっかり段取りをすることも必要になってきますね。

学習効率を高める②:分習法と全習法

効率を高めるもう一つの学習法は、知識やスキルなどの単体要素の習得ではなく、一連の流れを覚える際の方法です。かの有名な元素記号周期表の「水兵リーベ僕の船」や落語前座の「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ」あたりがイメージしやすいかもしれません。

実際の学習効率実験でこれらが使われたわけではありませんが、これらのような決められた一定の流れを覚える際は、一通り全ての流れを繰り返して覚える方法と、分割して覚えてそれらを繋げる方法の2つがあります。

例えば上記の「水兵リーベ」や「じゅげむじゅげむ」を覚える際に、全体を通す×8日間と4パートに分け4日×2をするのでは、どちらが効率が良いと思いますか?早速答えを言ってしまうと、全体を通して覚える方が習得が早いとされています。

正式には全体を通して覚えることを全習法、分割して覚えることを分習法といいます。

一般的には分習法が推奨されているようです。しかしこれはあくまで、教える側での負担が大きいことや、自由時間の少ない社会人が資格などを取得するためという前提条件で記述されています。

手順や一連の流れを指導する際には、今日はここまで、といった指導法はなるべく避け、繋がっているものに関しては1セットで教え通すことが好ましいでしょう。

とは言え、分習法には、全習法で発覚した全体の中でも習得の弱い部分を補う大事な役目がキチンとあるので、初めから分割せずに、全体を通して覚えたのちに細分して弱点を補う、というのがベストです。

後輩にだけ「素直さ」を求めていませんか?

効率の良い学習方法を取り入れ、丁寧に指導をしていても「なんか、入っていっている感覚がない」と感じることがあります。
「新人は素直が1番。先輩の言うことを素直に聞く後輩は伸びが早い」どの教育現場でも必ず耳にする一言です。
つまり、素直に聞き入れる姿勢がないから、指導が届かない、ということ。
教える側である先輩としても、教えたことをそのまま吸収し成長していく姿を見るのはある種の楽しみと、自分が教えたという誇らしさを感じるわけですから、「もっと素直に聞いてくれれば良いのに」と思ってしまうのもわかります。

実験データ等で科学的な証明が為されたわけではありませんが、成長と素直さは密接な関係にあると体感している人は多いはずです。
ですが、素直さが必要なのは教えてもらう側(新人や後輩)だけなのでしょうか。

実際に、指導側、教育側、先輩や上司に素直さが大事という声はあまり聞きません。
聞きませんが、要らないのでしょうか?そんなはずはありません。
分かりきっているから敢えて言わない?そうとも思えません。

「言える人がいないだけ」です。
どういうことかと言うと、先輩や上司にも素直さが必要だと感じるのはほとんどが後輩や部下であり、その意見を立場上封殺されているのです。

ドラマやマンガなどで未熟者の主人公が成功を収めたとき、カタブツや癖のある人物が主人公に攻撃的な発言をして、別の人物が「あの人なりに認めている証拠」「褒められている」とフォローを入れる微笑ましい?シーンを見たことはありませんか?

現実でも照れ隠しや、なんらかの抵抗感でぶっきらぼうになったり、攻撃的なものの言い方をする人は多いです。つまり「素直になれない先輩」になっているということ。

ドラマの主人公だったらその後も気にせず頑張りますが、現実の人間だったらムッとするし、しばらく引っかかります。教える側としては褒めているつもりでも、それが全く逆の効果を発揮し、後輩のやる気を削いでしまう、達成感を奪ってしまうこともあるということに気づかなければなりません。

最後に

後輩に求められる気質は先輩にも必要です。
教わる側も教える側も「成長したい(できる)」と信じ、素直に求め、素直に工夫し、素直に与え続けていく姿勢が求められます。人が究極的に成長するのは、指導する側とされる側が「セットで素直なとき」なのです。

こうした姿勢でメンターとして育成に携わっていく時、皆さんは「ただの先輩」ではなく「指示を仰ぎたい人」や「上司になってもらいたい人」になっていくはずです。つまり「教える側も成長できる」ということ。

メンター制度を活用して正しい育成をしていくと、「教育」は「共育」に進化していくということなのですね。

職場のコミュニケーションを活性化させる方法

現場マネージャーと共に悩み、試行錯誤してきた6年間の人材育成におけるコミュニケーションノウハウを、実際の取り組み事例とともにご紹介。具体的な取り組み方や部下との関わりがうまくいかない理由、コミュニケーションを良くするための2つの前提など、「読めば明日、何をすれば良いかがわかる」37P資料を無料で公開中。