「人を動かす、部下を動かす」のに褒め言葉は欠かせません。
相手をコントロールしたり支配したりするために褒めるのではなく、純粋に感謝や承認を示せば、相手はちゃんと受け取ってくれるからです。
私も褒められたい人です。褒められて伸びるタイプ(笑)褒められたくない人なんていないと思っているので、クライアントの管理職の皆さんにも「いっぱい褒めよう」とお伝えしています。
ただ、たまに「何を褒めればいいのかわからない」という質問をいただくことがあります。褒め慣れていないという理由から「褒め方がわからない」「褒めポイントはどこ」などと難しく考えてしまうこともあるようです。
素直に「ありがとう、助かった」と思えることを部下がしてくれた時に言葉を発すればいいだけだと思うのですが、管理職自身が「仕事だからやるのが当たり前」という感覚の中で長く育っていると、感じられない・思えないこともあるんですよね。
そうしたリーダー・マネージャーのために、具体的な「褒め要素」を4パターンご紹介します。たとえ感謝を感じられなくても『事実』を伝えればいいだけなんですよ。
1:結果に対して
部下があげた実績、成果など、行動や努力によって起こった結果そのものを評価する方法です。目に見える部分なので褒める側も褒められる側もわかりやすいですが、多用しすぎると「結果を出さなければ評価されない」という価値観を植え付けることになりかねないので注意が必要です。
2:過程に対して
成果を出すための過程で払った努力や変化、継続など、プロセスを評価する方法です。ゴールにたどり着くまでのステップをひとつひとつクリアしていること、以前と比べて変化し、成長している途中だということなどを伝えてあげます。
3:持っている素質、才能に対して
本人が持っている強み、それが生かされている場面、オリジナリティ溢れる考え方、独自のやり方・手段などを評価する方法です。強みは本人が無意識、無自覚であることが多いため、言われて初めて気づけるものです。言われると嬉しいですよ。
4:大切にしているもの、事柄に対して
価値観、姿勢、考え方、時間、リスクマネジメント、調和、プライドなど、本人が大切に考えていることを尊重し評価してあげる方法です。自分が当たり前に思っていることを尊重してくれるのだとわかるのは安心感につながります。「そこまで見てくれているんだ」と感じてもらいやすいポイントです。
1については、誰がどう見てもわかる「結果」なので多用されがちですが、成果主義に陥るリスクもはらんでいます。それが引き金となってメンタル不調なども起こりやすくなります。
でも、2,3,4については積極的に褒めていきたいポイントです。本人も気づかない強みや才能、プロセスや価値観を見ていてくれ、評価してくれるという安心感は「意欲」につながるからです。意欲は「やる気」です。部下のパフォーマンスを上げる活力剤になります。
また、場合によっては他者と比較するのが有効な時もありますが、諸刃の剣です。
慣れないうちはあくまでも「本人の過去・現在・未来」の時間軸で比較してあげるほうがいいかもしれません。
冒頭にも書きましたが「やる気をあげよう」「意欲を出させよう」として褒めるのは部下をコントロールしようとしているのと変わりません。そういう風に考えるからこそ褒める側と褒められる側といった「タテの関係」が増長されるのだと思います。
ただ、褒められると意欲が上がるのはみんな同じ。やる気だって湧いてきます。
昇進や給料や休暇などと同じく、褒められるという評価も部下が働いたことに与えられる当然の権利でもあるのではないでしょうか?
どんな人であっても、よく観察していれば必ず褒め要素が見つかります。
それを見つけて評価してあげるのも、上司の仕事のひとつです。