20代の頃、営業時代の上司はよく「いやぁ…やっぱりやってくれると思ってたよ。ホント助かった、ありがとう」と言ってくれました。私はこの言葉を聞きたくて、仕事を先読みし、実績を上げ、周囲の助けになりたいと思って働いていたような気がします。
でも不思議なことに上司が変わった途端「よくやった!さすが!」等の褒め言葉が全く耳に入らなくなりました。お分かりかと思いますが、この上司のことを私は全く尊敬していませんでした。前の上司と同じ”褒め言葉”でしたが、なんだか上から目線に感じたんですよね(上司だから当然なんだけど…)
『嫌われる勇気』で有名なアドラー心理学によると、褒める行為は「タテの関係」を増長すると言われています。イチ社員から経営者に向けて「よくやった」という言葉を発するとすれば強烈な違和感を感じるように、褒めるのは上から下に向けて行われる行為だという見解です。
私が2番目の上司に感じた上から目線はまさにこれでした。
いや、上司から部下ですから構図としては間違っていないんでしょうけど、耳に入ってこない褒め言葉なんて意味がないと思いませんか?そして上司であるあなたが普段部下にかけている褒め言葉が、もしも部下の耳に入っていないとしたら…ちょっとゾッとしませんか?
きちんと相手に伝わる、ふさわしい褒め表現というのがあるのです。
ヒントは最初の上司が私にかけてくれていた言葉の中にあります。
部下は褒められたいと思っています、間違いなく。たとえタテの関係であったとしても、尊敬している上司からならなおさら誰もが「認められたい」と思うはず。
だから私はいつも「いっぱい褒めよう」とアドバイスをします。
ですが、自分が部下から尊敬されているかどうか?評価されているのかどうか?って正確にはわかりませんよね?ここを不安に思っている上司の方も多いと思います。
だからこそ表現は間違えない。
相手に正確に伝わりにくい褒め表現は避けないといけません。
たとえば「よくやった」はやっぱり上から目線に聞こえるし、「さすが!」は場合によってはバカにされているようにも捉えられやすい。
そこで冒頭の上司の「助かった、ありがとう」なんですね。
これは自分と部下を横に並べた位置関係で承認を表現しています。貢献に対し感謝を述べる、これならイチ社員が経営者に向けて発したとしても違和感はあまりありません。タテの関係ではなくヨコの関係なんですね。
他にも「君のおかげで」「その考え方はいいと思う」などの表現もヨコの関係で発せられる言葉ですし、場合によっては「すごい」「尊敬している」なども使えるかもしれません。下手に出すぎると「さすが」と同じように聞こえる可能性もあるため、相手との関係性を見極めてから使いたいところです。
どんな表現を使うとしても、事実と違うことや思ってもいないことを褒めようとすれば相手に必ず伝わります。誠実に伝えればちゃんと気持ちは伝わるし、不誠実ならばその不誠実さが伝わってしまう。
ただ、本当に部下に感謝を述べたい、認めてあげたいと思っているのにもかかわらず、その表現で損をするのだけは絶対に避けたいですよね?
どんな相手であっても「ヨコの関係」を意識し、誠実さを持って言葉をかける。
きっとあなたのそういう姿勢が、部下にとっては”尊敬できる上司”に映るのだと思います。