【人材育成】新入社員が来る前に考えるべき「育成者側の心構え」

年度末の慌ただしさのなか、4月入社の新入社員さんの受け入れ準備は進んでいますか?
この時期は自分自身も、新入社員としてのフレッシュな気持ちを持って仕事に臨んだ頃のことを思い出します。
見聞きするもの全てが知らないことばかりのあの緊張感や不安。今ではそうそう味わうことのできない貴重な体験です。
早いところではもう新入社員の入社が始まっていますし、教育体制や育成プランの見直しが必要かもしれませんね。

新入社員に何を教えるべきか?

さて、少し目線を変えて「去年の新入社員」は順調に育っているでしょうか?
会社の大きな戦力、人財になりつつある人もいれば、まだまた新入社員気分が抜けていない人、挫折してしまった人様々ではないでしょうか。

新入社員を教育するのは本当に難しくて大変です。会社の戦力にする為に、業務以外にも教えなければならないことが非常に多いですし、教わる方も教える方も根気が必要です。

私が今、携わっている携帯業界でも、ただ携帯の販売をしていれば良い時代ではなくなりました。インターネット回線やライフライン、金融商品などの副商材の提案、訴求しなければなりません。会社やお店の評価は、ほとんどが数字で見られてしまっているので、提案や訴求をするだけではなく、『獲得』が求められます。どの店舗も、新入社員を1日でも早く『獲得』する戦力に育てるのに一生懸命です。

ここで間違ってしまいがちなのが、『獲得』の為に、トークスキルやテクニックを叩き込んでしまうこと。
『獲得』の為の近道ではありますが、『会社の戦力や人財』と考えた時には、実は大きな遠回りとなることがあります。

たとえば、バスケットボールの場合。最初にダンクシュートの仕方を教えますか?
答えは『NO』のはずです。
まずは、レイアップシュート・・・いやいや、その前にドリブルから・・・その前に、バスケットボールの基礎から・・・そうです、教えるのにも段階があります。

トークスキルやテクニックの前に、それらの商材を提案する意味や、それらを提案することで会社やお店がどうなるのか?また、お客様がどうなるのか?そうした『本質の部分』を徹底的に教える事が大事です。

技術を先に習得すれば『獲得』する事には長けるかもしれませんが、本質を教えてあげないと根本の理解が不足し『何の為に獲得してるのだろう?』『獲得するのに疲れた』『もう獲得したくない』といった気持ちが突然やってくるのです。

最初のうち『獲得』出来た時は嬉しくて、モチベーションも上がり、楽しくて仕方がないでしょう。しかしこれが毎日続けば、『獲得』している時には気付きにくいですが、徐々に徐々に落とし穴に落ちていきます。

新人が辞めてしまう「育成者側の要因」を排除する

トークマジックや数字のマジックで『獲得』するのには限界があります。限界とは『獲得数』を意味しているのではなく『心』を指します。つまり『心』の部分が疲れてしまうということです。

心は、一度疲れてしまうと修復に時間が掛かります。さらには手遅れで修復不可能になることも。これが優秀な人財であっても会社を去っていくことに繋がるという事態は、特に販売系のスタッフには多く見受けられます。

目の前の『獲得』も大事ですが、数年後も見据えた教育が必要。新入社員を生かすも殺すも教育する側次第なのです。

「慣れ」てくる頃が一番怖い「舐め」

数年前、新人教育に入っていた頃に、入社2か月目の二十歳の女子を担当していました。
彼女は初めての接客業。お店、業務、同僚、お客様など『慣れ』ていかなければならない事がたくさんあります。

最初は知識もなく、緊張から動きが覚束ないわけですが、それでも一生懸命さでカバーできるのが新人の魅力。私たちも昔そんな経験をしてきましたよね。

これが、日々を重ねて経験を積んでいくと、徐々に心に余裕やゆとりが生まれ、次第に『慣れ』ていきます。『慣れ』という言葉を辞書で引くと、経験を重ねてうまくできるようになること。例「手慣れた手つき」とあります。『慣れ』は大事です。『慣れ』る事で、仕事の幅も視野も広がるからです。

ただ、この『慣れ』が、『舐め』に変わってしまう事が多々見られます。3か月を過ぎた辺りから兆候が出始めるでしょうか。『慣れ』が進み、最初の一生懸命さやひたむきさが消えていってしまうと、業務や対応が少しずつ雑になっていく。そして本人は気付いていないのが厄介な所です。

そんな時こそ私たちの出番ではないでしょうか?

その為には、我々も『舐め』になっていてはいけません。新人教育をしていれば、教える側も常に心地よい緊張感の中でやれますので、初心を忘れずにいられます。

時代とともに変わる育成のスタンス

私が新人だった頃は「これはどうして必要なのだろう?」「何のためにこの作業をしなければならないのだろう?」「この仕事を覚えたら一体何に役立つのだろう?」といったことを考える余裕はありませんでした。
そんなことを考えている暇があるなら、早く仕事をひと通り覚え、習得し、先輩と同じように一人前にできるようになれという空気でした。特にその空気感を疑問に感じることもなく、ただひたすら【一人前】を目指して指示されたことを必死にこなす、そんな日々を3ヶ月は過ごしました。

「3ヶ月経った頃には一人前になっていなければならない」というプレッシャーの中で必死に仕事を覚えたあの頃は、大変苦労しましたが幸せだったなぁと思います。余計なことを考えず「できるようになる」ことだけを追いかけていれば評価された時代でした。

さて、今はどうでしょう?
私は現代の若者たちの方が自分たちの時代よりもはるかに「考えている」のではないかと感じています。

「やる意味ある?」「それ無駄じゃね?」若者たちが感じているのであろう本心がストレートに言動に現れます。教えられた通りにできない、ふてくされた態度、やるべきことをやっていない…教える側にとってはなんとも可愛げがないように映るけれど、「納得できないことは行動できない」と主張しているのではないかな?仕事の本質を問うていると言いますか。

だから「いいからこれをやって」「いついつまでに覚えて」では全然通用しない。
仕事の存在意義、目的、役割意識など何のためにこの仕事をするのか?どうしてこの作業が必要なのか?この仕事は誰の役に立つことなのか?をしっかりと教え、納得できるものにしてあげないといけないんですよね。

私たちが「一人前になってから」理解した仕事の本質を、今の時代の新入社員は「一人前になるために」理解したいと感じているのではないでしょうか?思考が一歩先を行っているというか、とてもロジカルに考えている(感じている)若者が増えているように思えてなりません。

ということは、教える側に求められるのは仕事の本質を理解し、それをきちんと説明し、納得させられる力を持っていることです。ひとつひとつの仕事の意味、目的をまず自分がちゃんと理解しているか?そのあたりが問われているんですね。自分たちの頃のように「それが仕事だから」で片付けていたら、若者たちは納得することができません。

教える側が中途半端な姿勢で仕事をしていれば、すぐに見抜かれてしまいます。「それ、自分が今やる意味ありますか?」と言われて感情的になったり言葉に詰まるようではダメなんですよね(笑)

新人も育成者も『共に育つ』のが本来の教育

新入社員とともに、教える側も育つ。今はそういう育成が必要なのかもしれません。
たとえ社会人としての経験は浅くとも若者たちは「考えて」います。
考える力を養うように教育されてきているからです。
自分たちが新人だった頃を基準に考えていたら、付いてきてはもらえないんですよね。

改めて自分たちの仕事の意味や存在意義をしっかりと再認識し、先輩として新入社員に誇りに思ってもらえるような心構えや育成プランを準備したいですね。

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