人材育成におけるコミュニケーションエラーを解決するには

ほんのちょっとのボタンの掛け違いが、コミュニケーションエラーを生み、不信を生み、成果減という結果になることがあります。ハタから見れば些細なことのように思えるかもしれませんが当事者としては大きな問題であり、しかも悪いことに根底にあるのは思いやりとか遠慮とかいう表面上「前向きな」動機だったりします。

どう思われるかわからないから、心配だけど声をかけられない。
後輩の立場で先輩に意見を言うなんて、はばかられる。
自分なんかがしゃしゃり出たら、リーダーの立場がなくなる。

こうした「前向きに思える」動機で、コミュニケーションエラーってすぐに生まれるものなんです。本心で思っていることがお互い違うから、どんどん掛け違っていってしまうといいますか。

とことん話さないと見えてこない

「自分のことなんて、誰も気にかけてくれやしない」と思い込んで周囲に反抗的な態度を見せていた人だったけれど、話をする中で、本当は仲間がとても心配してくれていることを知り、感情がわっと溢れて止まらなくなる、ということもあります。

本当は助けてほしかったんだろうし、周りも実は助けてあげたかったのに、「どうせ」の気持ちから反発をしたり、声かけを避けたりして溝は深まるまま。その溝のおかげで、本当はお客様のために働きたいという共通の目的を持っているにもかかわらず、お互いがそうしているようには見えなくなっていたようでした。

これでは、成果が出るわけがありません。

お互いが「なんだかうまくいかないな」という思いを抱えたまま、日々の業務をこなすだけになっていれば、不満しか出てこなくなり本来の目的なんて誰でも見失ってしまうのかもしれません。成果が出ないと悩むなら、まずはやっぱり相手と(チームならメンバーと)とことん話さないと。目に見える結果には、目に見えない本質が絶対に隠れているからです。

「人から必要とされていない」と感じる時

成長とは、それまでとは違う選択を取って行動を変え、できなかったことができるようになることだと思います。ということは、人が成長する過程では大なり小なり「できない自分」に必ず直面するんですね。

後輩ができた、昇進した、部下ができた、独立した…こうしたステージアップの節目でなぜか上手くいかないとき、つまり「今までやってきたこと」では通用しない場面がそれです。

『部署の責任者になり新人教育を任されたら、新人は自分より年上、でもやるべきことは言い訳をしてやらない。関係各所に謝るのは自分の仕事…やってられないですよ』
この事例は「完璧を求めるプレーヤー」として今まで追求してきたものだけでは「人を育てる」という新しい仕事にちょっと足りなかったりする場面です。

『管理職に昇進。でも部下である古参のメンバーからたびたび指摘を受け、自信も持てない。指導をしてもらえてありがたいと頭ではわかっているけど、昇進したのだからもっと頼ってくれてもいいのに、という感情が先に立つ』
この場合は、「自分を必要としてくれない」と心が拗ねてしまってる状態。リーダーとしての姿勢や仕事ぶりはまだ未熟なのに”今、自分が持っているもの”を頼ってくれないことの方に目が向いています。

今まで培ってきた知識や技術や考え方を一旦、脇に置いて、それまでとは違う新しい選択を迫られる成長のタイミングでは、必ずと言っていいほどまず最初に壁に向き合わないといけないけれど、それは、人のせいにせずに「うまくいかない現状」を受け入れるという厳しいものです。

上に挙げたどちらの事例も根底にある感情は「”今までの自分”を相手が受け入れるべき」とか「受け入れてほしい」という押し付けになっちゃっています。壁から目を背けて、相手にばかり目を向けている。

だから、やってくれない/頼ってくれない、になるというわけです。このまま見過ごすわけにはいきませんが、育成者としてはつい及び腰になる反応ですよね。

なぜ必要とされないのか?を考える

そこからずーっと目を背け続ける人もいます。「できない自分」は認めたくないから、見ないように蓋をする。相手に求め続けて、不平不満ばかりを内側に溜め、周囲の評価も下がる一方。

でも「できるようになる」成長のチャンスと捉える人は、それまでの考え方や行動を”自分がどう変えるのか?”と考えることができます。きっとみなさんもそうではなかったでしょうか?

完璧でなくていい、と自分にも人にも許すことや、必要とされたいのならまず自分から必要としよう、と考えること、相手に求める前にまず、自分から変化を起こせる人です。だから成長できるんですよね。自分の行動や考え方の幅が広がるという成長です。

うまくいかないときは「相手がどう」と考えている気がします。自分に目が向いているように見えて、実は相手の言動や、相手から見た自分のことしか見えていない。しかもその大半は思い込みや先入観だったりするのです。

自分自身はどうなのだろう?
客観的に見たらどうなのだろう?

こうした着眼点を持てるかどうかが成長の分岐点です。そのためには自分の感情にも客観的に目を向けなくてはいけないんですよね。

自分の心の底にある感情自体に蓋をする人もいますが「こんな風に思ってはいけない」と抑え込むほど事態は厄介になります。だからまずは愚痴も不平不満も吐き出して、それから整理すればOK。かたくなな固定概念になっちゃう前に出した方がいい。うまくいかない状況に腹を立てる気持ちも、できない自分を悔やむ気持ちも認めてあげてからじゃなきゃ、目の前の壁には立ち向かえないですからね。

それを支援するのが対話、面談ということになります。

ムダに思えることこそ実は近道である

スタッフさんとの面談時間は3時間近くかかることもありました。
本人ですら、自分が今何を必要としているのかわからなくなっているのです。本質にたどり着くのに時間がかかるのはある意味当然のこと。この労力や手間を惜しんだり後回しにすると、問題はどんどん大きくなります。

上司やメンターの立場にある方が、部下、同僚、メンティーの話をじっくり聴く時間をぜひ定期的に取り入れてほしいと切に願っています。「愚痴や不平不満を聴くだけでしょう」なんて思わずに、その裏に隠れた本質や本音をぜひ引き出してあげてほしいなと思っています。

ただ、当事者同士の話し合いではなかなか難しいことも多いものです。お互いの立場もありますから「客観的に」話したり、聴いたりできないこともあるからです。私たちが実施している1on1ミーティングは、そういうところでお役に立てると思っています。第三者の立場なら当事者よりはわりと簡単に見えてくることもあるからです。

職場のコミュニケーションを活性化させる方法

現場マネージャーと共に悩み、試行錯誤してきた6年間の人材育成におけるコミュニケーションノウハウを、実際の取り組み事例とともにご紹介。具体的な取り組み方や部下との関わりがうまくいかない理由、コミュニケーションを良くするための2つの前提など、「読めば明日、何をすれば良いかがわかる」37P資料を無料で公開中。