やる気がない部下を上げたいのなら「動機」を見直そう

人はどういうときにパフォーマンスが上下するのだろう?と常日頃から考えています。1on1ミーティングでは「パフォーマンスが下がっている気がするけどどうしたらいいかわからない」「前向きに働くにはどうすればいいか」などのテーマで対話を進めます。ですからこれはプロとしていつも考えなければいけないことのひとつです。

実際の事例には「変わりたい」と口に出してみたものの、どう変わればいいのか、そもそも何を変えればいいのかなどの思考が、行動に落とし込む戦略(何をすればいいか)レベルまでには至っていないというケースもあります。こういう場合は「変わりたい」と口に出した願望そのものをもう少し掘り下げて考えていく必要があります。

ですが、たとえば自分の部下や後輩が「変わりたいんです」と言っていたら、聞き手である上司や先輩からすれば「変わりたいのだから行動するはずだ」と期待をし「頑張ってみなよ、応援するから」となるのが普通です。それなのに「動いていない」「結果が出ていない」となれば、「え?変わりたいって、やるって言ってたのに…」と思いますよね?「なんで動いてくれないんだろう?」「どうしてやらないんだろう?」と感じてしまうのはごく自然なことなのかもしれません。

自分自身に置き換えても「痩せたいと思っているのにおやつを食べている」とか、「勉強したいと思っているのにスマホから目が離せない」など、そうしたいと思っているはずなのに動けないということは、誰にでも起こることです。

行動するには『動機』が必要

人のパフォーマンスの上下には必ずモチベーション(行動の動機となるもの)が関係してきます。感情の生き物ですから「やらなければいけない」だけでは動機として少し弱い場合もあるんですよね。

上の事例で言うなら「変わりたい(痩せたい・勉強したい)」という言葉には本人の「やりたい」という動機が入っているじゃないか、と感じるかもしれません。ですがもし「変わりたい」の奥に隠れたホンネが「変わらなければならないと感じているから」だとしたらどうでしょう?動機としては「やらなきゃいけない」もしくは「やらされている」となっている可能性が見えてきます。

動機には段階がある

行動の動機付けとなるものは、外的(外から与えられるもの)と内的(自分の内側から出てくるもの)がありますが、内的に向けば向くほど、人を動かす動機として強く続きやすいものになっていきます。私たちはその状態が7段階あると考えています。

①:やりがい(価値)
②:やりたい(欲求・願望)
③:やれる(自発)
④:やってもいい(許可)
⑤:やらねばならない(使命・義務)
⑥:やらされ(指示・命令)
⑦:やりたくない(拒否・否定)

特に①・②は強い内的動機がある状態でパフォーマンス力も高いはずです。③・④は「自主的に行動するという前提」で捉えられている状態ですから動けるでしょう。そして⑤・⑥が外的動機をベースに「動かされている」状態。そして⑦になると無気力、動機なしの状態ですから「動かない」となるはずです。

何かをやりたいと思っている状態ならば内的動機があるので人は動けるはず。なのに動いていない、結果が出ないとなれば、何か別の要因があるのです。そこで「どうしてやらないの?」という疑問に「果たして今、どの動機の状態にいるのだろう?」という疑問もプラスして考えられると思います。そういう理由で「変わりたい」と口に出した願望そのものをもう少し掘り下げて考えていくということなんですね。

動機を1レベルずつ上げるには?と考える

やらされている、やらなければいけない、と考えている状態から「やりたい」にいきなり上げるのは難しいはずです。でも私たちはなぜか一生懸命「やりたいこと」を探そうとし、やらなきゃいけないことの中に、または外に、やりたいことはないだろうか?のような観点で考えてしまう傾向がある気がします。「やらねばならない」という動機を無理やり「やりたい」と思い込もうとしているのが「変わりたい(痩せたい・勉強したい)」という言葉になっているだけのことも多いんですよね。

どちらにしても「やる」には変わりありません。やった方がいいことでもあります。でしたら「どうしたらやりやすくなるか?」という観点で考えた方がラクですよね?

そこで大切なのが「今、どの動機の状態か?」をしっかりと把握することだと思います。そして現状を知ったら「どうすれば動機の状態を1段階上げられるか?」と考えるのです。「やりたくない」から「やりたい」に変えるのは至難の技ですが、「やりやすい」「やってもいい」ことなら見つけやすいのではないでしょうか?

また外的動機で動いているならば、それをどうしたら内的動機付けに変化させられるか?を考えていくことも効果的です。そうでないと「続かない」という事態が勃発するからです。「やりたくない」には簡単に変われます。

どういう時に人のパフォーマンスは上下するのか?

段階的に動機のレベルを上げていき「これならやれそうだ」と思えたとき、人はパフォーマンスが上がるのではないでしょうか。そして「やれない、できない」と思うことが増えていくとき、人のパフォーマンスは下がるのです。

動機レベルの最終形はもちろん「やれる」「やりたい」という自発的で主体的なものになります。皆さんが上司や先輩であるならば、部下や後輩に求めたいのはきっとここですよね?そのために「育成」をしていくんです。文字通り部下の動機を育ててあげるということになります。育てると言っても1段階ずつ上げていけば良くて、「これならやれそうだ」と感じられることを少しずつ増やしていくだけでいいのです。

何かにチャレンジしたいと思いつつなかなか動くことができない、変わりたいと思っているのに行動が伴わない、などには原因があり、それは動機と関係していることが多いです。そして『動機』と言うとなにか大層なものをイメージしてしまいがちですが、動機は育てていけると考えてみましょう。

そして皆さんがマネジメントやリーダーシップの役割を担っているのであれば、ぜひこの観点で部下と積極的に関わってあげて欲しいと思います。

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