部下への接し方Tips「言葉以外のコミュニケーション」に気を配る

皆さんは部下を育てる際、「何を使って」育成をしていますか?
会社や部署ごとに存在する育成マニュアルかもしれませんし、業務を「やってみせる」方法かもしれません。他にもe-learningなどのシステムや外部研修、OJTなどもありますが、そのすべてには【言葉】が存在していますね。

言葉や伝えることの大切さについてはこのコラムでも何度も取り上げていますが、それはコミュニケーション(対話や会話、発言、傾聴など)が人の成長に与える影響の大きさを重要視しているからです。当たり前ですがコミュニケーションのほとんどは言葉によって行われますから、伝え方や言葉の選び方は常に考え、悩んでおられる方も多いと思います。

ところがそれでも「あぁ、これでは部下に”勘違い”されてしまうなぁ」と感じる場面に遭遇することがあります。これはパワハラなどに発展することもあるとても重要なポイントなのですが、ほとんどの上司が無意識でそれをやってしまっているようです。

結論から申し上げると、コミュニケーションは「言葉だけではない」ということになります。

ノンバーバルコミュニケーションに気を配る

人と人とが意思疎通を図る際に使われるのが「言語」ですが、言語を使った意思疎通のことをバーバルコミュニケーションと言います。この時「共通言語」を使うと格段に意思疎通しやすくなります。国によって異なる言語はもちろんのこと、企業の風土や価値観や理念なども言語の一種ですし、個人同士の場合でも同じ感性や価値観の人と相互理解のスピードが速くなったりするのはお互いの共通言語(認識)が一致しているからです。また「同じ目標を目指す」「同じ目的のために動く」チームであればこの目標や目的が共通言語になりますね。

一方、言葉を使わないコミュニケーションのことをノンバーバル(非言語)コミュニケーションと言います。言葉を使わずに意思疎通?と疑問に感じる方もおられるかもしれません。

例えば朝の挨拶。「おはようございます」と上司に声をかけると「おはよう」と返ってくる。この時ぶっきらぼうな「言い方」であったり、目を合わせてくれなかったり、笑っていなかったりすると【あ、今日の上司はなんだか機嫌が悪そうだから気をつけよう】と察する。逆の場合もまた然り【今日は機嫌が悪くなさそうだ】とホッとする。

朝の挨拶で上司の機嫌を読み取る、職場のあるある事例ですが、機嫌を読み取っているのは「おはよう」という言葉ではありません。口調、表情、態度、姿勢、目線、トーンなどになります。これが非言語で相手に伝わる発信者側の意思ということになります。

意図せずとも伝わってしまう非言語コミュニケーション

「発信者側の意思」と表現しましたが、上司にはどんな意図があるのでしょうか?
たまたまデスクで読んでいた目の前の書類の内容に「う〜ん」と考え込んでいた時に声をかけられ思わずぶっきらぼうになったとか。直前の電話で理不尽な対応をされ、声をかけてきた部下に怒っているわけではないが笑えなかったとか。人によっては「朝から部下と笑顔で挨拶なんて気恥ずかしい」という気持ちが目線や表情に表れていることもあるかもしれません。

いずれにしろ「何かがあるんだ」という明確な意思が相手に伝わってしまっていますが、それは発信者が意図しているかどうかは関係ありません。そして勘違いを生むのはたいていこの「意図せず伝わってしまう非言語」の部分なのです。

いつも機嫌が悪そうだと察している部下は「自分が何か悪いことをしただろうか?」と推察し始め、自分を責めたり上司を責めたりするようになるかもしれません。上司からすれば「それは思い込み、勘違いだよ」と言いたいところでしょうが、その勘違いを生み出しているのは自身の表現の仕方や表情、目線などである可能性がとても高いのです。

「いつも声をかけているし、できるだけ部下の話を聞くようにもしています。なのにどうして部下は何も話してくれないのでしょうか?」「部下との距離を感じます。自分は嫌われているのかもしれません」「威圧的とか暴力的な言葉なんて一切使っていないのに、パワハラだと言われる」こうしたケースは、非言語の部分に気を配ることで改善することも多いです。

言葉以外にこそ意識のコントロールが必要

意図せず伝わってしまうというのは、つまりほとんどが無意識だということになります。
ちょうど先日、こんなお話を聞きました。「体調不良で声が出せなくなったとき、自分が普段いかに言葉に頼っていたかを思い知りました。挨拶一つとっても会釈や正対のないものだったかもしれない。部下への指示や褒め言葉でさえ目を見ることなく伝えていたかもしれないと反省したんですよね」言葉が使えない状況になってはじめて自身の無意識のコミュニケーションを振り返ることになり、気づきを得られたそうです。

私自身も感情がすぐ顔や口調に出てしまう方なのですが、だからこそ意識をしています。「相手にどう映るだろうか」ということを考えず勘違いさせてしまっていた時期もありましたが、言葉では伝わらない意図があるのだと知り(あの人は電話の対応が冷たいと言われたことがきっかけでした笑)表情・口調・トーン・目線などには気を配るように心がけています。

笑顔でいること、口調や言葉遣い、目線などは特に接客販売業では当たり前に言われることですが、部下に対してはいかがですか?部下の育成、関わり方に悩む人ほど「意図せず伝わってしまう非言語の部分」に意識を向けるだけで、職場のコミュニケーションは格段に変わるはずです。

もちろん人間ですから完璧はあり得ません。思わず出てしまったノンバーバルが意図しないものだったと気づいたら「あの時はごめん」「いつもすまない」と素直に謝ればいいんですよ(ここができない人も多いですが…ね)

「視点を上に上げること」に気を配る

特に上司になりたての頃に多いのですが「自分の言うことは絶対正しい」「なぜ言うことが聞けない、やれないのだろうか」という感覚に陥りがちです。「人の上に立つ」「人を裁く」という視点で物事を見てしまうんですね。ですが、自分は正しいはず⇒なのにどうして聞かないのか?よりも先に考えるべきことがあります。

正しいはず…それは、誰から見て?

それは、【自分が正しいと思うことは「上」にとって正しいことなのか】という部分だったりします。

一口に「上」と言ってもいろいろあるでしょう。会社や社長、直属の上司、または取引先や関連部署、そして何よりお客様。
どの部分から切り取ってみても「正しい」と言えることはそう多くはないかもしれません。とくに組織の場合は、相反する「しがらみ」も多いものですからね(笑)それでも物事を見るときの目線を「上に上げる」という変化は、上司に求められる大事な要素です。

上司としての自分の正論は、上から見たときの正論と比べても一致しているのか?
常にここを意識しないとチーム全体がブレていきます。もちろん、部下はついてこない。「上司の言っていることは、他が言っていることと違う」
これでは信頼してついていくことなんてできません。

「共通非言語」の影響力も大きい

「あの上司の言うことは上が言うことと違う」こう部下に思われると、それが部下の共通認識として捉えられてしまいます。冒頭で共通言語を使うと意思疎通が図りやすいとお伝えしましたが、「あの上司の価値観は会社(もっと上)の価値観と違っている」というノンバーバルな共通認識が部下同士の結束を生み、場合によっては「上司の言うことを全然聞かないチーム」が出来上がってしまうこともあるのです。こうなってしまうと修復には膨大な時間と労力がかかります。

「上司の視点は、さらに上の視点と合っているか」部下はほんとうによく見ています。発言もそうですが、非言語の部分でも整合性を見られていると思った方が良いかもしれません。ですから部下を抱えるチームリーダーは常に「上の視点」を見るように心がけ、自分自身の価値観と組織の価値観を合わせて共通言語として語り、言葉以外の部分でもそれを示すようにしないといけないのです。

最後に

言語(言葉)以外にも、表情・口調・姿勢・視線・そして視点などによるコミュニケーションが成り立っています。なぜか慕われない上司と不思議と好かれる上司の違いは、発する言葉に表れない非言語の部分を意識しているかどうか?が深く関わってきます。ちょっとした意識の差が職場内コミュニケーション、ひいては部下の成長や組織の成果に発展することを考えると、毎日の心がけを少しだけ変えてみようという気になってきませんか?

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