ちょっと想像してみてください。
その職場では、お昼休みに自由に外出ができます。
AさんとBさんは一緒にランチに行きラーメンを食べてきましたが、Bさんの方は「ちょっと用事があるから先に戻ってて」と、Aさんに言い残し、休憩時間を3分オーバーして職場に戻ってきました。
午後の業務が始まった際、デスクにいる上司がAさんとBさん2人にこう尋ねました。
「君たち、お昼はどこに行ってたんだ?」
すると2人はこう答えました。
Aさん:「ラーメンを食べてきたんですよ」
Bさん:「すみません、私用を済ませていたら遅れてしまいました」
さて、この上司の質問の意図を的確に捉えている答えは、Aさん、Bさんのどちらの答えでしょうか?
『そんなの、わかるわけない』と、感じたかもしれません。
そうですよね?どんな意図で2人に尋ねたのか。それはこの上司にしかわからないからです。
でも、一つ言えることがあります。
それは、同じ質問でも、受け取る側の状況や心境によって意図が変わって伝わる、ということです。
上司の質問の意図はもしかしたら、お昼に食べたものやランチ時間を楽しめたのかを聞きたかっただけ、という純粋な興味だったかもしれません。
でもBさんにはその意図が、遅れて帰ってきたことへの追求というふうに聞こえた。それはこの場合「Bさんの状況」にだけあてはまる捉え方なのだと思います。
もしも、この上司に追求をする意図がなかったとして。この状況で2人に同時に「どこに行ってたんだ?」という聞き方をすれば、意図が変わってしまう可能性がある。そのことを理解しているかどうか?ってものすごく大事だと思うんですよね。
こうした意図のズレがコミュニケーションのすれ違いを生み、それがきっかけとなって人間関係の問題へと発展することはほんとうに多々起こります。
たとえ純粋な興味や関心を持った部下思いの上司だったとしても、今回のようなズレが続けばもしかしたらBさんにとっては「小さなことを嫌味っぽく追求してくる上司」に見えてしまうかもしれない。
そう考えると、コミュニケーションって奥が深いのですね。
ですが、特に「質問」は訓練をすることで力を磨くことができる、と思っています。
今回の例で言うならば、より具体的に「何を食べてきたんだい?」と尋ねることでロスを防ぐことができるかもしれません。
もしも追求を意図していたのなら、Bさんにだけ個別に「遅れてきたのはなぜ?」と尋ねればいいのです。
質問するときには、その時の状況、聞きたい相手をしっかりと明確にして意図を共有できるように心がける。
こういう心がけが「訓練」になるのではないでしょうか?