フィードバックや会議の場で上手に自己主張できる人になろう

人に何かを伝える際に、ちょっとした葛藤を抱えることがあります。
「言いすぎちゃったかな」「なんか反応が冷たいな」「間違っていることを言ったかな」など。

言葉遣いには細心の注意を、感情はできるだけ出さないようグッとこらえ、伝わるような言い回しを考え抜いて、言葉を選んだつもりでも、自分の伝え方は本当に適切だったのか?と、あとからグルグル考えてしまうものですよね。

ただ、「思うようにうまくいかない」と嘆くチームを観察していると、こうした認識のズレから生じるコミュニケーションのエラーが引き金となって人間関係の問題を抱えていることが少なくありません。

何を見て伝わったかどうかを測るのか

「自分の意見は絶対間違っているはずがない」みたいに考えている人だと事態は厄介ではありますが、葛藤しながら伝えているような人にそれは当てはまりません。であれば、もう少し自分を認められるように考えてみてもいいのではないでしょうか?

例えば、部下や後輩に指導や指摘をする時などは、伝わったかどうかが最も不安になりやすいですよね。
「冷たい態度だった、反抗的な態度だった」
「口を尖らせていた、黙ってしまった」
「きょとんとした表情だった、声のトーンが小さくなった」など
不安の気持ちから、伝えた際の相手の【言葉や表情、態度】に目が向いてしまいますが、一旦そうした反応を脇に置いてみましょう。

そして、指導の後の相手の【行動】に目を向けてみると意外なことがわかります。

指導を受け入れいつも通り仕事をしている部下が目に入る。それどころか、いつも以上に奮起し結果を残す後輩がいる。別件で相談をもちかけられ「ありがとうございます」と素直な新人がいる。

たとえそこに笑顔や親しみはなく、もしかしたら不満げな態度が見えていたとしても、その後の行動は普段通り、もしくはそれ以上なこともあるはずです。指導が「檄」の役割を果たして気が引き締まったと考えられるかもしれません。

反応よく頷きながらこちらの話を聞いていて、最後には「わかりました、やってみます」といった言葉も返ってきている。それを見て理解してくれたと判断する。でも、相手のその後の行動は何も変わっていない。「やってみると言っていたはずなのに…」ということがありませんか?

それこそが、相手の反応で「伝わったかどうか」を測るのは危険だということなのです。
伝える目的は相手の『行動が変わる』ことですから、理解度(伝わった)を見るには、反応ではなく行動を見なければいけないということなんですね。

伝える目的の達成を阻む「どう思われるか?」

相手を見るときに「伝わっているかどうか不安」などの葛藤を抱えていると、表情や態度、言葉など、目に見えるもの、聞こえるもの全てが『不安』を前提にした情報として自分の元に入ってきます。つまり「不安」というフィルターがかかってしまうということです。

そのフィルターは事実を歪ませて思い込みに発展させる、強力なパワーを持っています。
不安が発展し、「もしかして自分のことを嫌な奴だと思っているんじゃないか」といった仮説の答えとなる情報ばかりが目につくようになったりするのです。

「人は、自分が見たいものを見るし、聞きたいものを聞く」とはよく言われますが、不安や自信のなさというフィルターにかけられた事実は、「ほら、やっぱり不安的中だった」などと思わせるように歪められてしまうのです。そうなると、見えているものが事実とは異なっている可能性が高くなります。

相手が自分のことをどう思っているのか?は正確には誰にもわかりません。こちらの伝え方が適切だったかどうかを判断するのは、場合によっては当事者ではない可能性すらありえるのです。必要以上に「相手にどう思われたのか?」を考えすぎるのは、本当の事実も、本来の目的も見失う結果に繋がってしまいます。

事実と感情はできるだけ切り離して考えるようにクセ付けましょう。なかなか難しいですが、意識して取り組む価値はあるはずです。

伝え方は「アサーティブ」に

コミュニケーションスキルの一つにアサーションの考え方があります。
アサーションとは、人は誰もが自分の意見や要求を表明する権利を持っているという立場に基づいた、自分も相手も尊重する自己表現の仕方のことを指しています。

・相手の考えを優先させるために自分の意見を抑える傾向
・相手を説得、屈服させるために自分の意見を攻撃的に主張する傾向

こうした伝え方の傾向は、人それぞれが持つ特性(思考パターン)やその時の状況(話の内容、話す相手との関係性など)によっても変わってきますが、いずれも「不安や焦り」などを前提に表面化する傾向です。

アサーションの考え方をベースにしたアサーティブな伝え方は、相手の考えも自分の考えも尊重するもの。これを意識して習慣づけることで、コミュニケーションの問題はほとんどが解決すると言われているほどパワフルなスキルです。

現場マネージャー向けのコミュニケーション養成講座では、このアサーティブな伝え方のコツ、注意点、話の組み立て方などを講義で学び、ロープレで実践するというワークを実施して、アサーティブな伝え方を身につけていただくお手伝いをしています。

ワークでは「つい、一方的に思いや考えばかり話している」とか「自分と異なる意見が返ってくると黙ってしまう」など、ご自身の伝え方の『クセ』を認識される方も多く、コミュニケーションスキル向上のひとつのきっかけになったといったご感想をいただいています。

わりと意識しないと、普段のクセは抜けないものなのです。
クセとは習慣です。継続して意識し続け、修正し続けることでしか、習慣は変えられないのですね。
コミュニケーションにおける伝え方の工夫は、終わりがないなぁと感じます。

コミュニケーションで組織は変わる

「伝わったのだろうか?」「どう思われただろう?」「なんでわかってくれないの?」こうした不安や焦り、自信のなさは、物事に思い込みというフィルターをかけて歪ませ、事実とは違う情報を私たちに見せてきます。

人と人との関わりにおけるコミュニケーションを考えると、フィルターによって事実を見る目を曇らされてしまうのはかなり危険と言わざるを得ません。その少しの曇りが対人関係の問題を引き起こし、人の成長を止め、チームのまとまりを阻害し、組織ごと崩れていく引き金となる場合さえあるのです。

ですから相手の表面的な反応ばかりに気をとられるのではなく、相手の「行動」に目を向けて、行動の変化を促す支援をし続けることが必要です。

そして逆を言えば、アサーティブな伝え方を少しずつ習慣化させ、自分も相手も尊重する主張ができる人がチームの中に増えていくと、お互いを高める助言や指摘などが浸透し、受け入れられていくことで、その組織は劇的に変化していくということになります。

自己表現、自己主張の工夫を「今から」そして「自分から」始めることで、誰もが尊重される雰囲気を作りあげていきたいですね。

職場のコミュニケーションを活性化させる方法

現場マネージャーと共に悩み、試行錯誤してきた6年間の人材育成におけるコミュニケーションノウハウを、実際の取り組み事例とともにご紹介。具体的な取り組み方や部下との関わりがうまくいかない理由、コミュニケーションを良くするための2つの前提など、「読めば明日、何をすれば良いかがわかる」37P資料を無料で公開中。