【1on1】部下との正しい面談のやり方。グチ聞きやお説教で終わらないために

部下のやる気をあげたい、チームをひとつにまとめたい。
上司の皆さんは毎日マネジメントに奮闘されていると思いますが、どんなアプローチも「これ」といった瞬発的で劇的な変化を生むことはまずありません。一朝一夕で変われると信じたいところですが、「これさえ知れば、やれば、変えられる」なんていうのは幻に近い。
それでもついつい私たちは、効率とか短期間でとか絶対的な正解とか、求めちゃうんですけどね。

近頃は大手企業の導入により注目されている1on1(部下との面談)の取り組みも増えてきています。が、「何を聞いたらいいのかわからない」「ただの愚痴聞きで終わる」「全然話してくれない」「ついお説教になってしまって…」など、仕組みを整える労力の割にうまくいかないというケースも多く見られます。それは、話を聴く側つまり上司側の「前提」に「一体、何の役に立っているの?」といった思考が存在していることに関係しているようです。

正しい面談ができると、ほとんどの方が着実に変化を遂げていかれます。では、正しい面談とは、どんな考え方や心構えですれば良いのでしょうか?

何のために部下の話を聴くのか?

面談での大きなテーマは「自分を理解すること、他者(環境)を理解すること」にあります。自分自身を振り返り、深く掘り下げて考えることは普段あまりしないですから、どんな人でも大なり小なり変化が伴うんですね。ですが変化というのは結果とは限らないので、最初は変化の実感が持てないことも多いものです。考え方や感じ方が今までと少し違う視点になり、迷ったり悩んだり、問題が増えたように感じるのも実は変化なのだ、ということです。

新たな視点から物事を改めて考え直してみると、それまではバラバラになっていた仕事の目的、働く意味、ビジョンや目的が徐々にまとまってきて、そこに向けてやるべきことが明確になる方もおられます。やるべきことが明確になれば、あとはやるだけ、やりきるだけ。やればおのずと少しずつ結果となって現れ、そうなって初めて「あぁ変わってきたな」という実感が持てるんです。

すぐに行動し、変化し、結果を出してもらいたい。そう焦る気持ちもわかりますが、「本人はしっかり現状を理解しているのかどうか?」という工程をすっ飛ばすのは「面談って意味あるの?」につながりやすくなります。

部下には何を促せばいい?

変化し結果を出してもらいたい。上司の目的を果たすためには「自分から変わろうとする」ことを部下に促す必要があります。環境、状況、出来事うんぬんばかりを原因にしていたからこそ変わらない(現状のまま)のだと気付き、まずは自分から考え方や行動を変えようとする人が現実を変えていくからです。

相手が変わってくれたら、環境を変えられたら、部署が変われば、もっと人格が優れていたら、人望を持っていたら…など「たらればの可能性」にしがみつくのではなく、自分の言うことを聞いてくれない、やり方が正解を教えてもらえない、評価されない、といった悩みや問題も、誰かや何かのせいにしていた自分「にも」原因があることに気づかせてあげることが重要です。

話してくれない部下には、どう接するか

弱音を吐いたり、悩みを口に出すと、相手から「そんな風に考えちゃダメ」「つまらないことでウジウジ悩んでるの?」と思われるんじゃないかと思って…そうやって心の内を明かさないまま一人で抱え込んでいる人は本当に多いです。皆さんの部下はいかがですか?

そして皆さん自身はどうでしょうか?
自分の気持ちを話す、考えを躊躇せずに話す、感情をしっかりと伝える、などは無意識に「苦手だな」と感じている人も多いように感じます。辛いことを辛いと言おう、不安や焦りのモヤモヤを話そう、という【選択肢】をそもそも持っていないということです。

その習慣はやがて、ふとした拍子にワケもわからず涙が出てくる、自律神経系の身体変調が現れる、やるべきことが全く手につかない、といったいわゆる”爆発”として表面化します。その時になって初めて「あ、こんなに溜め込んでいたんだな」と気づく(意識できる)のです。本人も、そして周りも、ですね。

自分の中からネガティブ思考を排除して、人に見せないように振る舞うことが求められている。部下もそう考えているのかもしれません。だとしたら考え方を変えるきっかけになるのは、たとえば弱みや欠点をお茶目に見せてくれる上司の姿ではないでしょうか?

ただ話を聞いてあげる環境を作り「いいから言ってごらんよ」「何があったの?」という声かけを諦めずに続けても、最初は嫌がられるかもしれません。私自身、若い頃は上司との面談を適当にごまかしてスルーしようと心に決めていたこともありました。それでも、私のそういう態度も受け入れてくれて声かけやヒアリングを継続してくれた上司のおかげで、考え方は少しずつ変わっていきました。

自分の考えや気持ちを話すことで、それまでは思いつかなかったような自分の内面を深く掘り下げるきっかけになり、自分自身をよく知ることが新たな視点を生みます。

すぐに結果に結びつくわけでもなく、劇的な変化が見られるわけでもなく、何なら悩みや迷いが増えるばかり。「こんなことをして、何が変わるの?」と感じるとしても、もっと自分のことを話してほしいという姿勢を部下に示すことを止めないで欲しいと思っています。

面談事例【人にこんなに相談したのは初めてです】

ある管理職の方は、一人の部下のために時間を取り面談を行ったそうです。周囲から「できる人」と期待され、努力も惜しまないその部下は、自分自身に過度にプレッシャーをかけていたのでしょう、誰が見ても絶不調に陥っていました。

管理職から見て、面談中の部下が十分に気持ちを話してくれたとは思えなかったそうです。ボーッとしていたり、話が途切れたりしながら時間ばかりが過ぎていく。その反応を見て、面談には全く気乗りしていなかったのだろうというのが一目瞭然だったと言います。

それでも、面談の後もたびたび電話で様子を聞き、部下を気にかけてあげた結果、10日が経過する頃には『今思えば、あの時相談できたのが自分にとっては大きかったです』と晴れやかな表情が見られたようでした。

『今まで、自分のことは自分で対処せねば…と思ってやってきました。ここまで人に相談したことはおそらくなかったと思います。上司には本当に感謝しています』とおっしゃっているそうです。

こちらから手を差し伸べることの大切さ

自分の弱さや欠点、「できない部分」は見せてはいけないという強迫観念に囚われている人は、自分から悩みを言い出すことができません。冒頭にお話ししたように「”人に話す”という選択肢」を持っていないのです。

だから、こちらから手を差し伸べてあげないといけない。
しかも「見せてはいけない」と思い込んでいるわけですから、すぐには差し伸べた手を握り返したりしません。ということは手を差し伸べ続けてあげないとダメなんですね。

根気のいることです。
成果がすぐに出るとも限らない非効率な業務に思えるかもしれません。
それでも、ここに手間と労力をかける価値は間違いなく大きい。
人のマネジメントという観点で言うならば、むしろ大半の仕事がここに集約されているといっても過言ではないと思います。

部下のパフォーマンスを高い状態に保つには、安心して取り組める環境が絶対に必要です。その安心を自分の手で放棄してしまっているのが「人に弱みは見せられない、相談できない」と思っている部下なのです。言い換えると安心を手に入れる手段を知らないのかもしれません。

「部下の問題を解決してあげよう」のように大きなことを考える必要はありません。
ただ話を聞いてあげる、ただ気にかけてあげる。そのための時間を定期的に作る。そしてそれを諦めずに継続してあげるだけで良いのです。

ちなみに、ですが。マネジメントする側の上司が「自分は上司だから弱みを見せてはいけない」と考えていると、部下はそれを感じ取り、同じように考え始めます。部下が話をしてくれないのは、上司自身の完璧主義思考が原因だったという可能性もありますのであしからず。

最後に

人がパフォーマンスを最大限に発揮するためには「安心してチャレンジできる環境」が必要だと言われています。面談をしても、愚痴ばかり、不平不満、会社への批判…聴くのも嫌になるような話題に触れると、諦めたくなってしまう気持ちもわかりますが、部下にリスクを取ってチャレンジをしてもらい、成長とより大きな成果をもたらしてもらうには、上司がその環境を整えてあげると良さそうです。

職場のコミュニケーションを活性化させる方法

現場マネージャーと共に悩み、試行錯誤してきた6年間の人材育成におけるコミュニケーションノウハウを、実際の取り組み事例とともにご紹介。具体的な取り組み方や部下との関わりがうまくいかない理由、コミュニケーションを良くするための2つの前提など、「読めば明日、何をすれば良いかがわかる」37P資料を無料で公開中。